月 雄弁な沈黙の音楽

f:id:touzou:20180817002614j:plain

 

川の光を、水の動きを見る

川の音を聴く

川の匂いを嗅ぐ

川の水の冷たさに触れる

川の水で身体を潤す

 

五感で触れる。

ヒトもその他の動物も。

 

月は?

 

月の音を聴いたことはない

ないけれども、ドビュッシーの月の光を聞くと、美しい月の夜を思い起こす。

その月の下で経験した、楽しかったこと、悲しかったこと、一様でない感情が双子のように生まれ、混ざり合う。

 

ドビュッシーは、ヴェルレーヌの詩をもとにこの曲を作った。

ドビュッシー自身がヴェルレーヌの詩から受けた心の印象、感覚の質感=クオリアを、曲に込めた。

だからそれを聞く僕たちも、彼の心に映った心の印象を同じように感じることができる。

 

誰も月の音を聴いた人はいない。

けれど、ドビュッシーの手によって、月の音に対するクオリアは共有された。

月の奏でているだろう音のひとつひとつが、音符にして具現化された。

 

月の音なんて、存在しないかもしれないものを、そんなこと関係なしに成立させた。

 

きれいだけど、儚いよね。

月ってこうじゃない?と。

 

芸術家のすばらしさよ。