君の中にあるものを、すべて吐き出してみなよ
さあ、はやく
その声かけに慌てた彼は、急いでその準備をした。
右手の人差し指をナイフに変え、自分の胸と腹を、首の根元からヘソにかけて、勢いよく一気に切り裂いた。
シャッという音とともに血しぶきが目に映る。
それから、なんだかたくさんのものが出てきた。
音楽的なもの、小説的なもの、絵画的なもの。
これなんか、形を整えてさえあげればちょっとはマシなものになりそうだな・・・
見知らぬ紳士が呟く。
なぜ、これらを自分の口から、手から、表現しようとしないのだ?
彼は答えた。
怖いから。